犯人生い立ち
母と思われる女性は海外でアジア系旅行者などを相手にする娼婦だった。
母親からの愛情なんて感じたこともない。
ただ、一緒にいる大人、という存在だった。
朝、目が覚めるとその母は冷たくなっていた。
お店に顔を出さないと見に来たガラの悪い男たちが冷たく動かなくなった母を袋に詰めて運んで行った。
ボクは「元締め」とか言う男の元に連れていかれた。
町で物乞いをさせられた。
もらいが少ないと殴られた。痛かった。
少ない日は自分の存在を消したかった。
「見つかりませんように……」部屋の隅で小さくなっていた。
そんな日々が続いて、ある時、体が辛くて街に行けず、部屋でぐったりしていた。
夜、みんなの上りを元締めが取り上げに来た時、誰もボクに気が付かなかったんだ。
ボクは死んだんだと思った。
食事が運ばれてきて、それでも腹の減ったボクは仲間と一緒に座って食べ始めた。死んでも腹は減るもんなんだな……
「あれ?お前、どこにいた?」
すぐそこにずっといたのに、仲間は誰も気が付いていなかった。
だんだんとこの力を自由に使えるようになっていった。
気配を消して、ただそこに居るだけではなく、そこにいる人達の意識をかいくぐって気付かれずに進むことも出来るようになった。
元締めがボクの力に気が付いた。
盗みを教えられた。
いい稼ぎができるようになったんだろう。
待遇がよくなっていった。
その国から組織が引き上げることになった時、元締めと一緒にこの国に連れてこられた。
母の祖国でもある韓国に。
オレは殺人をもいとわない危ない仕事の請負人になった。
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